「だんろのまえで」
作 ・絵 鈴木まもる
合計点:12.68 (2022年5月現在)
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出版社:教育画劇 1,210円
ISBN9784774611082
「だんろのまえで」の注目ポイント
- 「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社)で赤い鳥さし絵賞を受賞の鈴木まもるの作品
- 心が温まる絵本
- 読むだけでマインドフルネス効果があるかも?
「だんろのまえで」はこんな人にオススメ
- ちょっと疲れてしまった人。
- 優しさに包まれたい人。
- 穏やかな気持ちになりたい人。
「だんろのまえで」のあらすじ
ある日僕は山の中で道に迷ってしまいました。雪も降ってきて寒くてとても疲れて歩いていました。
一本の大きな木がありドアがついています。
僕は少し休ませてもらおうとドアを開けました。
中は真っ暗でした。「寒いからドアを閉めてこっちにおいで」と誰かが言いました。
「ドアの横にろうそくがあるよ」僕はマッチを擦って蝋燭に火をつけました。
蝋燭の火がゆらっと揺れました。生きているようで僕は少し嬉しくなりました。
蝋燭を持って部屋の中に歩いていくと、だんろの前で薪がパチパチと燃えていました。
「ここに座って暖まりなよ」暖炉の前にはウサギが座っていました。「ありがとう」 僕は暖炉の前に座りました。
暖炉の火が赤々と燃えています。 僕はお風呂に入っているように体全部が暖かくなってきました。
背中の辺がゴワゴワするので、見ると何匹か動物が寝ているようです。
「疲れたら休めばいいんだ、無理をしないでじっとしていれば元気になるさ」ウサギが火を見ながら言いました。
ウサギはそれだけ言うとずっと火を見ています。
火が静かにゆらゆらと燃えています。何も喋らず、火の動きを見ているだけで、気持ちが落ち着いてきます。
大昔の人もこうやって火を見ていたのかな。
そう思うと僕は嬉しくなってきました。
僕は後ろの動物にそっと寄り掛かりました。ごわごわした毛の下から柔らかいお腹の暖かさが伝わってきます。
横から何か動物がのそのそとお腹に乗ってきました。
ゴロゴロと喉を鳴らすので猫のようです。太った狸みたいな猫だなと僕は思いました。
重たいけど、気持ちがいいので何も言わず猫を撫でました。
猫のゴロゴロはもっと大きくなりました。
猫はザリザリザリと自分の手を舐め始めました。クリームパンでも食べているようでかわいいなと思いました。
猫は舐めた手を伸ばして僕のまぶたの上にそっと乗せました。暖っかくてとてもいい気持ちです。
僕はそのまま目を瞑りました。「僕はここが好きだよ」僕は小さな声でウサギに言いました。
「好きになるのが一番さ。好きになる気持ちがあればどこでも大丈夫。好きなことがあればどんな時でも大丈夫」ウサギも小さな声で言いました。
薪の燃える音がします。猫のゴロゴロと小さな寝息だけが聞こえます。
目が覚めると窓から光が差し込んでいます。外を見るとお日様の光がいっぱいです。「みんなありがとう。僕行くね」「君が好きだよ」ウサギはほっぺたを僕のほっぺたにくっつけて言いました。
僕は外に飛び出すとお日様に向かって駆け出しました。
決して多くを語るわけではない、ウサギの一言一言が優しさに溢れていて、読んでいるだけで温かい気持ちになる作品です。忙しい毎日の中で、少し疲れてしまったなとという人にぜひ手にとってほしい1冊です。