「なまえのないねこ」
作:竹下文子
絵:町田尚子
合計点:13.96(2024年3月現在)
ehonnavi
amazon
楽天books
出版社:小峰書店 1,650円
ISBN9784338261333
「なまえのないねこ」の注目ポイント
- 2019年MOE絵本屋さん大賞、未来屋えほん大賞、リブロ絵本大賞、講談社絵本賞 の4冠受賞作品
- 「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社)の竹下文子さんと、「ネコヅメのよる」(WAVE出版)の町田尚子さんがタッグを組んだネコ絵本
- 猫の視点で描かれた心温まるストーリー
「なまえのないねこ」はこんな人にオススメ
- 猫が好きな人。
- 心温まるストーリにほっこりした気持ちになりたい人。
- 子供に動物との愛情を伝えたい人。
「なまえのないねこ」のあらすじ
↓ここから本文引用僕は猫。名前のない猫。
誰にも名前をつけてもらったことがない。
小さい時はただの「猫」だった。大きくなってからはただの「猫」
街の猫たちは、みんな名前を持っている。靴屋の猫はレオ。「僕の名前はラインオンという意味なんだぞ」レオはいつも自慢している。
本屋さんの猫はげんた。げんたのげんは元気のげんだって。「げんちゃん、こんにちは」お客さんが必ず声をかけていく。
げんたは店の人気者だ。
八百屋さんの猫はチビ。「いやあ、これでも昔は小さかったんだけどね」
大きなチビはちょっぴり恥ずかしそう。
お蕎麦屋さんの猫はつきみ。パン屋さんの仲良しコンビはハイジとクララ。
喫茶店の猫は、名前を二つも持っている。
おばさんは「ミミちゃん」と呼ぶし、おじさんは「しろまる」と呼ぶんだ。
どっちで呼ばれても、「にゃー」とお返事。
お寺の猫の名前はじゅげむ。長生きする縁起のいい名前なんだって。
「いいな。僕も名前欲しいな」
「自分でつければいいじゃない。自分の好きな名前をさ。猫1匹分の名前くらい探せばきっと見つかるよ」
「好きな名前。好きな名前。街を歩きながら僕は探す。看板。矢印。車。電車。本日特売。駐車禁止。どれも違う。ちょっと違う。全然違う。
「あらタローくん久しぶり」「モコちゃん元気?」犬にも名前がある。
「このダリアとガーベラ綺麗ね」花にも名前がある。
野良猫。汚い猫。変な猫。そんなのは名前じゃない。
こら!あっちいけ!しっしっ!そんなのは名前じゃない。
なかなか止まない雨。雨、雨、雨。心の中が雨の音でいっぱいになる。
「ねえ。お腹空いてるの?」あ。優しい声。いい匂い。「きみ、綺麗なメロン色の目をしているね」
そうだ。わかった。僕が欲しかったのは、名前じゃないんだ。
名前を呼んでくれる人なんだ。
「おいで。メロン」
↑ここまで
私たちは大切な何かに名前をつけることで、より愛おしいと感じ、また名前を呼ばれたら嬉しくなる、 そんな単純だけど、誰もが持っている大切な感情を猫の目を通して描いている作品です。
監修者(絵本アドバイザーいぶき)「なまえのないねこ」の見どころ解説
まず、この絵本を手に取ったとき、主人公の猫の視点で世界が切り取られている作品だなと感じました。主人公の猫から見える世界は、人間の足元や景色の一部ばかり。
人間が積極的に目線を合わせようとしないと、猫とちゃんと見つめ合うことはできません。
そうゆう視点の描き方と、名前が欲しかったねこの本当の気持ち「欲しかったのは、名前じゃないんだ、名前を呼んでくれる人なんだ」というストーリー展開が絶妙にシンクロして、とても素敵な作品だなと思います。
我が家にも5歳になるおてんばの三毛猫の女の子がいますが、彼女から見える世界もこんな感じなのかしら?と思い少しほっこりしてしまいました。
また、名前を複数持っている猫のシーンで、うちの近所の猫も、「たび」って名前と「A子ちゃん」って名前で呼ばれているけど、名前を 呼ばれたら、必ず「にゃー」って元気に返事しているな、なんて日常の景色を思い出し、あの子は色々な名前で呼ばれることはどう思っているのかしら? と少しクスッとしてしまいました。
猫好きの人はもちろんのこと、そうでない人にもぜひ手に取ってほしい1冊です。